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CTOが考えるAIエージェント時代の組織変革と技術戦略

はじめに

はじめまして!4月からENECHANGEのCTOを務めさせて頂いています、亀田と申します。今回は弊社で進めていく、AIエージェントが当たり前になる時代に向けた組織変革と技術戦略について書かせていただきます。

「産業革命以上の大きな波が到来している」

この言葉を聞いた時、正直なところ「また大げさな表現だな」と思いました。でも、実際にCursorやClaude、DevinなどのAIツールを触ってみて、その認識を完全に覆されました。

ENECHANGEのCTOとして、技術戦略の責任者として、この変化の波に乗り遅れるわけにはいかない。むしろ、先頭に立って組織全体をAIネイティブな状態に変革していく必要があると確信しています。

業界の変化を目の当たりにして

最近、他社の技術責任者との情報交換で、衝撃的な話を聞きました。

PdMがCursorを活用して仕様書作成を大幅に効率化したという話。開発経験ゼロのPMがCursorを使ってSQL作成まで行うようになったという話。デザインシステムをMCPサーバー化して社内に提供しUI開発を高速化しているという話。

これらの話を聞くたびに、「うちは大丈夫だろうか?」という焦りを感じていました。AIツールの活用はもはや「選択肢」ではなく「必須」の時代に入ったと確信した瞬間でした。

ENECHANGEの戦略的アプローチ

ツール選択の苦悩

AIツール導入の承認を得るまで、実はかなり苦労しました。「費用対効果は?」「セキュリティリスクは?」「本当に必要なのか?」という質問の嵐。

でも、実際にCursorを試してみて、その価値を確信しました。特に印象的だったのは、複雑なコードレビューの自動化です。従来なら数時間かかっていたレビューが、数分で完了する。この体験が決定的でした。

費用を意識しすぎずにツールを活用できることが重要と考え、定額制であるCursorを選択しました。段階的にDevinとClaudeも導入し、その他ツールも必要に応じて検討していく予定です。

技術基盤構築の挑戦

単なるツール導入ではなく、プロダクト開発におけるAIツール活用を推進するための技術基盤を構築することが重要です。

今後、AIツールと連携する社内MCPサーバーの開発にも取り組んでいきます。これにより、社内の設計書やドキュメントをAIツールが参照できるようになり、より精度の高い支援が可能になります。

また、「AIネイティブ」時代の品質保証プロセスについても調査検討を進めています。従来のレビューやテスト手法では対応しきれない、AI生成コードの品質保証について、新しいアプローチが必要だと感じています。

組織変革のビジョン

全職種への波及効果

AIツール活用のメリットは、エンジニアに限ったものではありません。これは私が最も強調したいポイントです。

要件定義書・仕様書・設計書などドキュメント作成の効率化、デザイン作成やプロトタイプ作成の効率化、コードから仕様や影響範囲の把握をエンジニア以外も行えるようになるなど、全ての職種にとって大きな価値があります。

特に、PMやデザイナーが技術的な内容を理解しやすくなることで、チーム間のコミュニケーションが大幅に改善されると期待しています。プロダクト開発における仮説検証のプロセスがかつてないほど高速化されることにもつながると考えています。

UX改善の変革

特に注目したいのは、UX改善の変革です。従来の「デザインやデータを提供するだけの出力組織」から、「社会・サービスに対して問いを立て、試し、学び続ける思索組織」への転換を目指します。

AIを「プロトタイピングのアシスタント」として活用することで、MVP開発までの自走力を持ち、サービスとしてあるべき姿を短時間で目指すことができます。仮説→実装→気づきのループをデザイナー・データ主導でも高速に回すことができるようになります。

具体的な取り組みの紹介

継続的に様々な取り組みを行っていく予定ですが、今回は足元進めていく2つの取り組みをご紹介します。

LLMチャレンジウィークの挑戦

組織全体のAIネイティブ化を加速するため、「手動コーディング禁止週間 = LLMチャレンジウィーク」を実施します。期間中は手動コーディングを禁止し、Cursor/Claudeのみで開発を行います。

正直に言うと、この取り組みには不安もあります。「本当に全員が対応できるのか?」「開発速度が落ちるのではないか?」という懸念は拭えません。

でも、この挑戦なしには、組織全体のAI活用レベルを上げることはできないと考えています。失敗を恐れず、実験的なアプローチを取りながら、全社員の成長と組織全体の競争力向上を目指していきます。

AIエージェント活用リレーブログ

さらに、2025年7月1日から「AIエージェント活用リレーブログ」を実施します。リレー形式で日々ブログを投稿し、CursorなどのAIツールを活用して執筆します。

この取り組みの目的は、成功例だけでなく失敗談や困ったことなども共有し、チーム全体での学習と成長を促進することです。各記事の終わりに自然なバトン渡しを行うことで、組織全体の連続性と知識共有を図ります。

期待される成果と課題

組織力の向上

これらの取り組みを通じて、情報格差や属人化の解消を図ります。全員がAIを活用できるようになることで、組織全体の能力が向上し、より効率的で革新的なプロダクト開発が可能になります。

一方で、AIツール活用を前提とした優秀なエンジニア・デザイナー・PMなどがいるかどうか、ということの差がむしろ大きくなるとも考えており、AIツール活用推進に留まらない人材育成にも積極的に取り組んでいきます。

開発効率の大幅向上

ドキュメント作成、プロトタイピング、テスト自動化、データ分析、不具合修正支援など、開発プロセスの各段階で効率化が期待できます。複雑な反復作業の自動化により、チームメンバーはより創造的な仕事に集中できるようになります。

外部発信による業界貢献

外部に一つの事例として情報発信を重ねることで、日本全体のAIネイティブなプロダクト開発組織作りにも貢献できたら幸いです。それが結果的に、ENECHANGEの技術力と組織変革力のブランディングにも寄与したら良いなとは思います。

直面する課題

もちろん、課題もあります。AIツールの学習コスト、既存の開発プロセスの変更、セキュリティリスクの管理など、解決すべき問題は山積みです。

でも、これらの課題を乗り越えることで、組織全体が成長できると考えています。失敗を恐れず、実験的なアプローチを取りながら、全社員の成長と組織全体の競争力向上を目指していきます。

おわりに

AIツールの活用は、単なる効率化の手段ではありません。プロダクト組織全体の能力を根本から変革し、新しい時代の競争力を持つ組織へと進化させるための重要な取り組みです。

失敗を恐れず、実験的なアプローチを取りながら、プロダクト開発組織全体の成長と競争力向上を目指していきます。

この変革の過程で生まれる学びや気づきを、チーム全体で共有し、より良い組織づくりに活かしていきたいと思います。


この記事は、ENECHANGEのAIエージェント活用リレーブログの一環として執筆されました。次回は、プロダクト開発統括部の柏木隆宏さんが、統括部長の視点から見る技術革新をお届けします。