こんにちは、ENECHANGEで新規事業推進室の室長をしている水本です。
前回の草間さんの記事(「エクスペリエンス部長の挑戦!Cursorで実現した業務アプリPoC開発」)を読んで、AIエージェントの活用がより具体的で実践的な段階に入っていることを実感しました。
私も前回のブログでは、AIが仕事のスピードや発想力を劇的に変えてくれる存在だという実感から、「AIをコスト削減の道具とだけ捉えるのはもったいない」と書きました。
それから2ヶ月。今も日々AIと一緒に仕事をしています。リサーチ、資料作成、要点整理、モック開発、画像生成…。あらゆる業務で、AIは着実に"使える存在"になってきました。
でもその中で、こんな違和感にも気づき始めました。
AIは爆速で答えを出してくれる。けれど、自分が"正しい問い"を立てられないと、何も前に進まない。
リサーチは爆速。でも画像生成はズレまくる。その理由は?
私の場合、政策や業界動向のリサーチにAIを使うと、非常に精度の高い情報が引き出せます。なぜなら、リサーチにおいては「自分が何を知りたいのか」「どの前提のもとで情報が必要なのか」をある程度構造的に捉えた上で、問いを立てているからです。
一方で、画像生成になると途端にうまくいきません。 「こういう雰囲気で」「この構図で」と指示しても、まったく期待したものが出てこない。
これは、自分が何を指定すべきか、どこが選択の分岐点になるのかを理解できていなかったからだと気づきました。
つまり、「何を問い、どこまで指定し、どこをAIに委ねるか」という設計図(フレームワーク)を持たないままAIに頼っていたんです。
問いの"構造"が甘いと、AIは爆速で間違える
AIのアウトプットがズレてしまう場面では、たいてい問いの立て方やスコープが曖昧なままになっています。
- 「なんとなくこういう資料が欲しい」
- 「とりあえずこのトピックで画像を作ってみて」
- 「このデータってどう思う?」
こうした曖昧な問いに対しても、AIはそれっぽい答えを返してくれます。でもそれは、"それっぽいだけの回答"です。そしてそれを見た人は、こう思ってしまいます。
「やっぱりAIって、イマイチだよね」
でも本当は、AIの精度が低いのではなく、人間の"問いの設計"が曖昧だっただけなんです。
プロトタイピングの罠:動くけど"つながらない"プロダクト
この問題は、コードやプロダクト開発でも起こります。
最近、AIと一緒にプロダクトの試作品(プロトタイプ)を作ったのですが、UIも動く、データ取得もできる、表面上は"それっぽい"ものが出来上がりました。
でもふと気づきました。
- データベースとどう接続する?
- サインイン後のユーザー状態はどこで管理?
- どの環境に、どうデプロイされる?
こうした全体の設計が、自分の中でまったく描けていなかったんです。
つまり、部分だけは爆速で作れる。でも構造との"つながり"がないから、使えないものになる。
プロトタイプが実用に耐えるものになるかどうかは、システム全体のスコープや構造への想像力があるかどうかにかかっています。
「AIって使えない」の誤解は、問いのズレから生まれる
最近、「AIって使えるの?」と聞かれることがあります。
正直に言えば、AIはすでに"使える"ものです。 でも、それは正しく問いを立てられたときだけだと思っています。
問いの設計が甘いままAIを導入すると、間違った方向に爆速で進むだけです。 そして、誤ったアウトプットを見て「やっぱりAIは使えない」と判断されてしまう。
でも、本質的に問うべきはこうではないでしょうか?
「このAI、何がズレてる?」ではなく、 「この問い、どこがズレてた?」 なのだと。
おわりに:AI時代の"問い"は、最大の生産性レバーである
AIは、尋ねられたことには爆速で答えてくれます。 でも、「何を尋ねるべきか」を決めるのは人間の仕事です。
画像生成がうまくいかないのも、プロトタイプが実用に至らないのも、すべて「問いの構造設計」の問題でした。
これからのAI活用は、ツールの性能よりも、私たちの"問いを設計する力"が鍵になる。 そう強く感じています。
私はこれからも、AIに期待しながら、 それと同じくらい"問い"にこだわっていきたいと思います。
次回はCTO室の岩本さんが、「社内AIチャットボットがMCPで大幅進化 ―― OAuth対応でNotionやGitHubも利用可能に」について語ってくださる予定です。お楽しみに!