ENECHANGE Developer Blog

ENECHANGE開発者ブログ

LLMチャレンジウィーク実施レポート - ENECHANGEのAIネイティブ化への挑戦

こんにちは、ENECHANGEの石橋です。

昨日の安部さんの記事(「Claude Codeで変わる、コミットメッセージとPR作成の効率化」)を読んで、Claude Codeの自動コミット機能の実践的な活用方法に感銘を受けました。コミットメッセージの認知負荷がゼロになるというのは、まさに私たちが目指していたAIネイティブな働き方の一例です。

組織横断的にAIエージェントが浸透している今だからこそ、その原点となった「LLMチャレンジウィーク」について振り返ってみたいと思います。

tech.enechange.co.jp

エグゼクティブサマリー

2025年6月から7月にかけて実施した「LLMチャレンジウィーク」は、ENECHANGE全体でAIネイティブな働き方への転換を目指す取り組みとして一定の成功を収めました。手動コーディングを原則禁止してAIエージェントを活用した業務に徹底的に取り組むことで、組織的な学習と変革のきっかけとなりました。

主要成果

  • 継続利用意向 97.4% - ほぼ全員がAIツールの継続利用を希望
  • 生産性向上実感 89.2% - 参加者の約9割が生産性向上を実感
  • 推奨意向 91.7% - チームメンバーへの推奨意欲も高水準
  • 総合満足度 73.7% - 今後の改善余地も確認

LLMチャレンジウィークとは

2025年6月から7月にかけて、ENECHANGEでは「LLMチャレンジウィーク」という組織全体でAIネイティブ化に挑戦する取り組みを実施しました。これは、手動コーディングを原則禁止し、AIエージェント(主にCursorやClaude Code)のみで業務を遂行する、かなり大胆な実験でした。

背景と目的

ENECHANGEは2025年6月、急速に進化する生成AI技術への対応として、全社的な「AIネイティブ化」を推進することを発表しました。

AIエージェント導入の背景

プレスリリース(2025年6月)において、以下の理由からAIエージェントの導入を決定しました:

  1. 競争優位性の確立 - 「AIを使いこなす能力」を企業の競争優位性として位置づけ
  2. 全社的な底上げ - 社員間のAI活用格差を防ぎ、組織全体のスキル向上を実現
  3. 知識の共有 - AIに関するナレッジをサイロ化させず、組織知として蓄積

LLMチャレンジウィークの目的

この取り組みの背景には、「AIシフトに乗れない企業に未来はない」という危機感がありました。しかし、これを単なる危機ではなく、ENECHANGEが大きく成長できるチャンスと捉え、全員でAIネイティブ化に挑戦することにしたのです。

ENECHANGE独自のアプローチを実施しました:

  • 実践を通じた学習 - エンジニアの手動コーディングを禁止し、AI活用を強制的に体験
  • 職種横断的な参加 - エンジニアだけでなく、PM、デザイナー、ディレクターも参加
  • 組織的な知識共有 - Slackでの積極的な情報共有とベストプラクティスの蓄積

実施概要

  • 期間: 2025年6月23日〜7月11日(1週間のプログラムを2回実施)
  • 参加者: 合計41名(エンジニア、PM、デザイナー、ディレクターなど多様な職種)
  • アンケート回答者: 38名
  • ルール: 手動コーディング原則禁止、AIエージェントによる業務遂行

推奨ツール

  • Cursor(IDE)
  • Claude Code(コーディングアシスタント)
  • その他(Gemini、AmazonQ等も使用可)

参加者構成

プロダクト開発統括部、CTO室所属の全員が対象となり、以下の職種が参加しました:

  • システム開発部: エンジニア、QA
  • エクスペリエンス部: デザイナー
  • デリバリー推進部: PM、ディレクター
  • CTO室: エンジニア

主要な分析結果

1. 全体的な成果

満足度と継続利用意向

主要指標の結果

事後アンケート(38名回答)の結果から見えた主な成果は以下の通りです:

主要指標の結果

  • 継続利用意向 97.4% - 実際の業務での有用性を実感
  • 推奨意向 91.7% - チームメンバーへの積極的な推奨意欲
  • 総合満足度 73.7% - 一定の評価を獲得、さらなる改善の余地

プログラム全体を通じて、参加者から比較的好意的な評価を得ることができました。継続利用意向97.4%という結果は、AIツールの実用性を強く実感したことを示しています。

学習機会としての価値

総合満足度が73.7%という結果は、組織にとって貴重な学習機会となりました。この結果から以下の改善の方向性が明確になりました:

  • 職種別アプローチの重要性 - 各職種の業務特性に応じたカスタマイズの必要性
  • 段階的導入の有効性 - 初心者から上級者まで幅広いスキルレベルへの対応
  • 継続的サポートの価値 - 特に新しいツールに慣れ親しむためのサポート体制
  • 期待値設定の重要性 - 参加者が取り組みの価値を最大限感じられる環境づくり

これらの学びは、今後の組織的なAI導入において貴重な知見となっています。

生産性の変化

生産性変化の分布

生産性向上の結果

  • 89.2%の参加者が何らかの生産性向上を実感
  • 71.1%が1.2倍以上の向上を報告
  • 44.7%が「大幅に向上(1.5倍以上)」を実感
  • わずか7.9%のみが「変わらなかった」と回答

このデータは、短期的な学習コストを考慮しても、AIツールが確実に生産性向上に寄与することを示しています。

2. スキルレベル別の効果

AIツール利用経験別の生産性向上率を分析した結果、興味深い傾向が明らかになりました:

AI利用経験別の生産性向上率

経験者ほど生産性向上を実感する傾向が見られ、AIツールの効果的な活用にはある程度の習熟が有効である可能性を示唆しています。

3. 職種別の成果

職種によって満足度と生産性向上に差が見られました:

職種別の満足度と生産性向上率

PMやフロントエンドエンジニアで比較的高い満足度を示し、インフラエンジニアでは満足度は低いものの生産性向上は実感している結果となりました。この職種間の差は、各職種の業務特性とAIツールの相性の違いを示唆していると考えられます。

4. 効果的だったタスク

AIエージェントが特に効果的だったタスクの上位は以下の通りです:

順位 タスク 特徴
1位 調査・分析 最も多くの参加者が効果を実感
2位 テスト作成・自動化 エンジニアを中心に高評価
3位 資料作成 PM・ディレクターから支持
4位 プロトタイピング 素早い実装に効果的
5位 新規コード作成 ボイラープレート生成で威力発揮

5. 使用ツールと満足度

ツール 利用者数 利用率 主な評価
Cursor 27名 71.1% AI補完、チャット機能が好評
Claude Code 12名 31.6% MCP連携、git操作自動化が特徴
Gemini 2名 5.3% ブラウザベースで手軽
AmazonQ 1名 2.6% -
Notebook LM 1名 2.6% -

複数ツールを使い分けた参加者も10.5%存在し、タスクに応じた使い分けが始まっています。

組織的な学習と発見

1. 効果的なプロンプトテクニック

参加者から共有された効果的なアプローチは以下の通りです:

  • 詳細な情報提供 - 画像やファイルを含む具体的な指示
  • 段階的な指示 - タスクを分解して順次確認
  • コンテキストの活用 - .claude/rulesやCLAUDE.mdの継続的な更新

2. AIエージェントの限界

現時点での課題として認識されたものは以下の通りです:

  • コードレビュー - 深い理解が必要なレビューは苦手
  • 複雑なデバッグ - 原因特定に人間の判断が必要
  • Jupyter Notebook - 対話的な環境での動作に課題
  • ドメイン固有知識 - 業界特有の知識は明示的な入力が必要

3. 組織への影響

チーム横断的な効率化

「AIエージェントを活用すると境界をまたいでチーム全体の効率が図れる」

PMがエンジニアに確認せずとも仕様を理解できるようになり、チーム全体の効率が向上しました。

新しい働き方の確立

「もうAIエージェントなしの開発はありえない。洗濯機がある時代に洗濯板で洗濯するメリットは何もない」

参加者の多くが、AIとの協働を新しい標準として受け入れています。

参加状況と効果

参加日数の分布

参加日数 割合
5日間すべて 47.4%
4日間 10.5%
3日間 7.9%
2日間 18.4%
1日間 15.8%

フル参加率は47.4%に留まり、多くの参加者が断片的な参加となったことが課題として挙げられます。

今後に向けた提言

1. 今後の改善に向けた提言

今回の取り組みから得られた知見を基に、以下の改善アプローチを検討します:

  1. 個別化されたアプローチの導入

    • 職種別の導入ガイダンスとカスタマイズされた研修
    • スキルレベルに応じた段階的な学習プログラム
    • 参加者のニーズに合わせた柔軟なサポート体制
  2. 継続的な学習支援の強化

    • メンタリング制度の充実
    • ベストプラクティス共有の仕組み化
    • 定期的なフォローアップとスキルアセスメント
  3. 組織全体での取り組み推進

    • 全社的なAI活用戦略との連携
    • 成功事例の積極的な共有と横展開
    • 持続可能な学習文化の醸成

2. 中長期的ビジョン

  1. AIネイティブな組織文化の確立

    • AI活用を前提とした業務プロセスの再設計
    • 評価制度への組み込み
  2. 継続的な学習機会の提供

    • 定期的なチャレンジウィークの実施
    • AI技術の最新動向キャッチアップ
  3. 競争優位性の確立

    • エネルギー業界特化のAI活用ノウハウ蓄積
    • 生産性向上による開発速度の向上

結論

LLMチャレンジウィークは、ENECHANGEのAIネイティブ化に向けた重要な一歩となりました。41名が参加する変革プロジェクトにおいて一定の成果を収め、組織全体でAIツールとの協働に向けた意識変革のきっかけを提供できました。

主要な成果

定量的成果

  • 継続利用意向97.4% - 高い実用性への確信
  • 生産性向上実感89.2% - 9割近くが業務効率化を実感
  • 総合満足度73.7% - 一定の評価を獲得、さらなる改善の余地

組織的成果

  • 職種を超えた知識共有文化の促進
  • AIツールを活用した新しい働き方の体験機会の提供
  • 効果的な運営手法とサポート体制に関する知見の蓄積
  • 大規模変革プロジェクトの運営ノウハウの獲得

今回の取り組みから得た教訓

今回の取り組みは、組織全体でのAI導入における貴重な学習機会となりました。短期的な生産性低下を恐れず全社的にチャレンジしたことで、AI活用の可能性と課題の両方を深く理解することができました。

特に、職種や経験レベルに応じたアプローチの重要性、継続的な学習支援の価値、そして組織変革における段階的な導入の効果を実感したことは、エネルギー業界におけるAIネイティブ企業への成長に向けた貴重な経験となりました。

参加者の声(抜粋)

AIとの協働で得た新しい視点

「コードの体裁(変数名やネストなど)を考える必要がなくなるので動作にのみ集中してコーディングができるため精神的にも肉体的にも楽だった」

「GitHubとの連係でリポジトリからプロダクトの仕様を読み取ることができた。エンジニアに聞かなくてもよいことが増えそう」

「そのプロジェクトを長くやっているとドメイン知識で何が必要なのかが曖昧になりがちなところをAIエージェントはしっかり質問してくれる」

今後への期待

「知識やルールを正しくインプットすれば、計画・検討・チェック・ドキュメント作成や自動化など何でも効率化できそう」

「プロトタイプを大量に作るのに良い」

これらの声は、AIツールが単なる効率化ツールではなく、仕事の質を向上させるパートナーとして認識されていることを示しています。


次回は岩本さんが「AIエージェント『ブログほめ太郎』におけるStrands Agentsの活用」について書いてくれる予定です。Strands Agentsという新しいフレームワークを使った技術的な実装について、どのような知見が共有されるのか楽しみにしています!