ENECHANGE Developer Blog

ENECHANGE開発者ブログ

事業譲渡を受けたアプリとの統合で失敗、 そしてユーザーからの評価回復に至るまで

こんにちは、EV充電サービス事業部でFlutterエンジニアをしている小林です。

2023年12月に弊社とSmart Shopping様と共同で「IoT系のプロダクト開発の裏側」というテーマのオフライン勉強会を開催いたしました。その中で「事業譲渡を受けたアプリとの統合で失敗、 そしてユーザーからの評価回復に至るまで」というタイトルで発表した内容を、改めてブログ記事としてまとめます。また、その後日談についても触れようと思います。 enechange-meetup.connpass.com

背景

ENECHANGEでは2022年春にEVの充電サービスとアプリをローンチしました。このアプリのコアとなる機能はもちろんENECHANGEが設置する充電器で充電することです。

しかし私たちが目指しているのは、すべてのEVドライバーにとって価値のあるアプリになることです。そのためにも自社設置の充電器だけではなく、日本中のあらゆる充電スポットを探すことのできるアプリになる必要がありました。その目的を果たすため、ENECHANGEは2022年9月にアユダンテ株式会社のEVsmartという事業を譲り受けました。

EVsmart事業では独自に収集した日本中の充電スポットを網羅したデータベースと、それを探すことのできるモバイルアプリを提供していました。

この事業譲受のニュース掲載とほぼ同じタイミングで、私はENECHANGEにFlutterエンジニアとして内定をいただいただきました。しかも、EVの納車直前でEVsmartアプリを使って付近の充電環境を調べていた最中だったため、このニュースにはとても驚き、そしてワクワクしたのでした。

入社早々、私はEV充電エネチェンジアプリとEVsmartアプリの統合プロジェクトにアサインされ、この2つのアプリの統合を主導することになりました。この時点で両アプリの機能差分が一覧化されており、EV充電エネチェンジアプリの方に不足機能を移植していくという方針までが決まっている状態でした。

アプリ統合のための泥臭い取り組み

アプリ統合に取り組み始めて最初に突き当った壁は、EVsmart事業の複雑性でした。EVsmartアプリはEV充電エネチェンジアプリに統合することが決定していましたが、EVsmartアプリと同等の機能をもつウェブサイトやOEMアプリなど提供しているプロダクトが多く、かつそれらは同じバックエンドを参照していました。つまり、統合のために機能に手を加えると、それらのすべてのサービスに影響してしまうのです。このような複雑性から、開発チーム内での設計の議論が停滞してしまい、前に進まない状態に陥ってしまいました。

事業目線ではEVsmartアプリのユーザーにエネチェンジの充電器を使ってもらいたく、アプリ統合もなるべく早く終える必要があります。しかしながら統合はそんなに簡単なものではありません。そのため、EVsmartアプリの方にEV充電エネチェンジの充電スポット情報を掲載し、かつその画面からEV充電エネチェンジアプリへ誘導するディープリンクを設置することにしました。これで自社充電器への集客もある程度でき、統合までの時間かせぎとなりました。

確保した時間で改めて複雑性に向き合いました。これは本当に泥臭い作業です。EVsmartアプリとそのサーバーサイド、EV充電エネチェンジアプリとそのサーバーサイド、その両方のシステム構成や設計を把握するため、とにかくEVsmart事業と自社のエンジニアにたくさんの質問をしました。そしてアプリ・サーバーサイド問わず、あらゆるコード(PHP、Ruby on Rails、Swift、Kotlin、Dart、・・・)を読みました。

最初は大海を泳いでいるような感じでしたが、だんだん島の輪郭が見えるようになってきました。把握できたシステム構成などはなるべくわかりやすい図におこし、開発に関わるメンバーが誰でも理解できるような状態にしました。これにより「現状がこうなっているなら、このようにシステム間を繋ぐといいね」といった議論がようやく進むようになってきました。

前述のとおりアプリ統合の都合だけで機能に変更を加えてしまうと、関連するプロダクトに影響が出てしまいます。その影響を最小限にするため、EVsmartのバックエンドは極力変更せずに統合を進める方針に決めました。システム構成を紐解いたことで、定期的なデータベース同期を行うことと、EV充電エネチェンジアプリのAPIサーバーが、EVsmartのバックエンドとの仲介役となれば、一通りうまく統合できそうだという目処がついたのです。

このような苦労の末、2023年6月末に予定通り統合したアプリをリリースすることができました。しかしこの時点で重要な点を見逃していることに私たちは気づけていませんでした。

リリース後にアプリストア評価が⭐️1に...

リリース後、多くのEVsmartアプリユーザーから元のアプリに戻してほしいという声をいただきました。その声はすぐさまアプリストアの評価にも表れ、iOSアプリは⭐️1.4まで下がってしまうことになりました(iOSは統合のタイミングでストア評価のリセットをしてしまったことも影響しています)。EVsmartアプリもEV充電エネチェンジアプリも統合前は⭐️3〜4で一定の評価をいただけていた状態だったのですが、一体何が起きてしまったのでしょうか。

EVsmartのみ提供していた機能については、概ねEV充電エネチェンジアプリへの移植ができていましたし、リリース後も目立った不具合は出ていません。EVsmartアプリからEV充電エネチェンジアプリへのユーザー移行も社内のEVsmartヘビーユーザーが驚くほどにシームレスにできたという自負もあります。

しかし私たちはEVsmartアプリのコアバリューである「マップで充電スポットを簡単に探せる」というUXレベルの高さを見逃していたのでした。マップで充電スポットを探すための機能一覧ではその差はほとんどありませんでしたが、それぞれの機能の使いやすさはEVsmartアプリに比べると劣る部分が多い状態でした。また、EVsmartアプリユーザーにとってはUIが大きく変化してしまったことも影響していたと思います。

アプリストア評価回復のための泥臭い取り組み

開発チームはストアの評価回復を最優先課題として取り組むことになりました。まずはユーザーからの声をすべて集めることから始めました。アプリストアへのレビュー投稿やカスタマサポート窓口への問い合わせ、Twitter(現在のX)などのSNSへの投稿(毎日エゴサーチ)、社内のEVドライバーやその知り合いからの声、そしてEVsmart事業譲受前のプロダクトオーナーからの意見、それらすべてを集約しました。集まった声は約250件。これらすべてに目を通し、整理・分類してどの問題から解消すべきか優先度づけを行いました。

また、自動的に集められるものは事業部のSlackにも通知し、この現状を事業部メンバーが肌で感じることで、対応の温度感を高めました。

対策検討には社内のEVドライバーも巻き込み、いただいた声の本質的な問題は何かをEVドライバー目線で理解するように努めました。そして、優先度の高いものはなるべくミニマムに改善してすぐにリリースするようにしました。根本的な問題解消には時間がかかるようなものでも、少しの改善でその問題の半分でも解消されるのであればそれでリリースするというスタンスです。なるべく早くユーザーの痛みを少しでも解消したかったのです。

統合したアプリのリリース後、毎週の頻度でアプリの改善版をリリースし、約2ヶ月間で7回のリリースを行いました。また、リリース内容はSNSを通じてもユーザーに伝えるなど、ユーザーとのコミュニケーションも強化しました。

このような取り組みが徐々にユーザーに受け入れられ、SNSでも好意的な意見をいただけるようになりました。それまでは厳しい意見が続いていましたたが、その穴から一旦脱出できたという実感がありました。

ここまでの取り組みにより、充電スポットを探すというUXレベルもEVsmartアプリに近いものになりました。改善活動の中で「急速充電スポットはマップのピンでその最大出力を表示する」というEVsmartアプリにはなかった機能を開発したのですが、それは特に多くのユーザーから好意的な声をいただくことができました。

しかしながらアプリストアの評価は大きく回復しませんでした。ネガティブな評価に比べるとポジティブな評価は待っていてもつきにくいものです。であればこちらから評価をいただけるように対策する必要があります。

その頃ちょうど弊社ではEV充電エネチェンジのPRのためにEVドライバーが集まるイベントへの出展をはじめていました。そこで、開発メンバーも参加しユーザーの声を直接伺いにいくことにしました。イベントに集まってくださるEVドライバーの方には、現状のアプリへの率直なフィードバックとストアの評価を依頼しました。ご意見をいただけた方には、それがポジティブ・ネガティブどちらであるかに関わらず、ノベルティのプレゼントでお礼させていただきました。結果としては、改善したアプリはポジティブに受け入れられており、⭐️4,5といった評価をたくさんいただくことができました。

また、この2ヶ月でやってきた改善活動を見ていてくださったユーザーから温かい声をかけていただけたことで励みになりましたし、さらに良くするためのアドバイスをいただいたりと、とても貴重で有意義な機会となりました。

直接的な評価回復策ではありませんが、ストア評価の変化を毎日自動的にチェックしてSlackの事業部チャンネルに投稿するようにしました。高めの評価がいただけるようになったことで、日々数字が改善していく過程を社内に伝えることができました。開発チームのモチベーションにもつながったのも良かったです。

イベントでの評価獲得はとても効果が高かったのですが一時的なものですので、継続的に新規ユーザーの評価が得られるような仕組みも必要です。そして、ユーザーが本当にアプリで良い体験をしたと感じてもらえた時に評価を依頼できるのがベストだと思います。

幸いなことにEV充電エネチェンジには「アプリで簡単に速く充電してもらう」というコアバリューがありました。ENECHANGEでは、現時点で広く普及している普通充電器の倍の出力を持つ充電器のみを設置しており、この強みはどんなEVドライバーにも魅力的なものでした。そこで、ユーザーにとって満足する充電ができたと思われるタイミングでアプリから評価を依頼するようにしました。

このような策がしっかり機能したおかげで、アプリを統合して5ヶ月後(2023年12月)までに300件近い評価をいただき、⭐️3.5まで回復させることができました!

まとめ

このEVsmartとEV充電エネチェンジアプリの統合プロジェクトを経て、統合する両アプリが提供する価値のレベルを下げてはならないということを学びました。今から思えばですが、リリース前に十分なベータテストを行えていれば、リリースを中断するような判断もできたでしょうし、そもそも統合プロジェクトにおけるプロダクトマネジメントが機能するような体制構築ができていれば良かったな、など反省点はたくさんあります。この失敗経験を今後の開発に活かし、より良いプロダクトをユーザーに提供していきたいと考えております。

この失敗後のアクションはとても良く機能したと思います。やはりユーザーが何に困っているのかを正確に把握し、その痛みを的確に解消していくような改善活動はユーザーにしっかり伝わります。大きな機能追加も大事ですが、細部の質を上げていくこともユーザーの評価につながることを実感できました。

また、アプリのポジティブな評価を得るには待っているだけではダメで、アプリのコアバリューの部分を武器に評価をもらいにいくような取り組みが必要であることもわかりました。そのためにも、アプリに明確なコアバリューがあることは必要条件となりますし、それを磨き続けていくことも重要なのです。そして、私たちのコアバリューは誰にとっても使いやすい持続可能なEV充電インフラを提供することです。EV充電エネチェンジではこれからもこのコアバリューを磨き続けていきますので、応援していただけると幸いです。

後日談

オフライン勉強会でのこの発表から約半年が経過しました。この間も充電インフラ環境づくりのためのユーザーを巻き込んだ取り組みである「エネチェンジサポーターズ」発足や、この6月初には日中の電力を有効活用した定額プラン「エネチェンジパスポート」といった新しい価値提供のための機能開発を進めてまいりました。もちろん細かな改善活動もEVドライバーイベントへの参加も続けております。

2024年4月にテスラオーナーズクラブ主催の全国ミーティングに参加した時の様子

おかげさまでアプリストアでも安定的に高い評価をいただけるようになっており、iOS・Androidともに ⭐️4.1 に到達いたしました!これもEV充電エネチェンジを応援してくださる皆様のおかげです。重ねてになりますが、EV充電エネチェンジは誰にとっても使いやすい持続可能なEV充電インフラを拡大すべく尽力してまいりますので、引き続き応援のほどよろしくお願いいたします!

アプリストア評価の推移